Little AngelPretty devil 
       〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “秋の声”
 



さすがに熊はいないようだが、
それでも京の都にほど近い割に 野生の生き物もたんと居る土地で。
海に山にと獲物の多い南紀に比すればやや劣るが、
帝への献上として特別な狩りをする儀も執行されなくはないくらいだから、
鶏やウサギ程度は遊んでもいる、山へ分け入れば鹿くらいはいるかも知れぬ。
触れられる生という形のそれら以外、
元は何だったのやらというよな、
もしかして人の魂魄のなれの果てやもしれぬという物騒なものなら
もっと潜んでいるかもしれない、
そんな微妙な土地なせいだろか。
恐持てのする異形の存在が、地脈の雄々しさにも負けないほどの頼もしさ、
ものによっちゃあ恐ろしい暴走さえしかねぬ不心得者を睥睨してもおり。
情けなんぞかける義理もないと、
まだ生きておるものまでも、頓着なく平らげ食うてしまう非情さで、
そこら一帯を治めておるのだが、

 「あぎょん。」
 「あしょぼvv」

足元の草むらからびょんびょんとバッタの類が飛び跳ねて右往左往するのに先導されるよに、
よう似た二人の童が屈託のないお顔で駆けてくる。
まろぶようにという描写そのまま、寸の足らない小さなその身を転がすように
とてとてやってくる様子は何とも愛らしく。
子ウサギは肉づきが柔らかいなぞと、ごくごく自然に思うはずの蛇神様でさえ、

 「おお、ちびらか。よう来たな。」

自分の腰までも丈の無いような幼子二人、きゃっきゃと懐くのへ、
いい子だのうと目を細めるあたり、
これも人たらしの術か、それとも実は〇〇な性分なのか。

 「ああ"?」

わあ怖い。

 「夏場は大変だったろう。暑かったからな。」

ふかふかな毛並みを持つおチビさんたちへ、今年もまた結構な猛暑だったの案じてやれば、
耳の間に大きい手を入れて撫でてくれるのへ きゃわきゃわ嬉しそうに懐きつつ、

 「う?」

何か意味不明なことを訊かれたようなお揃いのお顔になり、
毛皮着ている分がだなと詳細を詰めて訊き直されたのへ、

 「えと、雪こんこで遊しょんだ♪」
 「冷や冷やしてたの〜♪」

さすがは人外にも縁のある陰陽師殿の膝下に居るだけあって、
そういう常識はずれな涼み方も出来たらしい。(
残暑お見舞い 参照)

 「そうか、そういう裏技も使いやるか。」

ただの人の子が徒にやらかしたものなら、生意気なと感じるところだが、
我が物顔が鼻について来た人間の一人でありながら、
そんな中でも最も鼻につく権勢者相手に
自分もまたいけ好かないと反骨精神もろ出しで悪戯しまくっているような御仁ゆえ、
阿含も それは面白いと呵々と笑っただけであり。
 
 「なら、これからの冬支度へも色々と工夫を凝らしようよな。」

その前には野分も襲い来るだろが、
それこそ天文は専門だろうし、地脈も率いて防御の策は完璧だろうよと。
自分もまた この子らのためという建前の下に介添えする気満々の蛇神様、
金木犀の甘い香のする森の中、
キチキチチイチイ、鋭いお声で泣いているモズの声を追うように、
小さな天狐二人を率い、小さな裏山への巡回という名のお散歩に繰り出すのであった。



 
     〜Fine〜  19.10.18


 *もうちょっと早い秋のうちに書き始めてたらしいのですが、
  バタバタしてる間に放り出したので何かこうとしてたか忘れ去ってました。
  この冬もあぎょんさんは冬眠しない模様です。
  子ギツネさんたちが遊びに行きまくるんだろうなぁ。

お声掛けはこちらへ めーるふぉーむvv 

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